日本の固有品種として長く愛されている黒ブドウひとつが、マスカット・ベーリーAです。
生食用も兼ねたブドウであることから、“食べるブドウ”として広く知られていますが、優れたワインを生み出すブドウであり、近年多様なスタイルのワインがマスカット・ベーリーAからつくられています。
今回、そんなマスカット・ベーリーAの魅力をまとめました。
さらに、「CRAFT WINE SHOP」おすすめのマスカット・ベーリーAワインを3本紹介します。
日本が世界に誇る黒ブドウ、マスカット・ベーリーAの魅力をひもといていきましょう。
マスカット・ベーリーAは日本生まれの黒ブドウ
マスカット・ベーリーAは、日本で生まれた黒ブドウです。
1927年に川上善兵衛氏(岩の原葡萄園の創設者)によって開発された品種で、高温多湿な日本の気候にも耐性を持つ栽培しやすい黒ブドウ品種ということから山梨県を中心に日本各地で栽培されるようになりました。(山形県や長野県、兵庫県、広島県なども栽培が盛ん)
そんなマスカット・ベーリーAの特徴は生食用とワイン用を兼ね備えていること、ベーリー種(アメリカ系品種)とマスカット・ハンブルグ種(ヨーロッパ系品種)を親に持つといったところ。
生食用ブドウ独特のキャンディ香とワインらしい酸味、タンニンを感じられる世界的に珍しい独特な風味のワインを生み出すことで知られています。
ただし、ワインが持つその特徴からワイン愛好家や専門家から、“ブドウジュースのような味わい”と低く評価されていたのも事実です。
そんな中、マスカット・ベーリーAのポテンシャルを最大限引き出そうとするワイン関係者などが栽培方法や醸造方法を研究し続けた結果、近年では世界に比肩する高品質なマスカット・ベーリーAワインが多く生み出されるようになりました。
赤系果実の香りやスパイス、ハーブ、比較的穏やかな酸味とタンニン、複雑で骨格のある構造。
ヌーヴォーのような新酒から長期熟成されたタイプを含め、日本が世界に誇れる「日本の赤ワイン」がマスカット・ベーリーAから生み出されています。
マスカット・ベーリーAについて知っておきたい3つのコト
マスカット・ベーリーAをより深く知るために、知っておきたいポイントを3つにまとめました。
マスカット・ベーリーAワインを選ぶ上でも役立つ情報なので、ぜひ覚えておきましょう。
①マスカット・ベーリーAの香りや味わい
マスカット・ベーリーAの代表的な香りとして、“イチゴ”や“キャンディ”といった評価を多く目にします。
また、ブルーベリーやラズベリー、ハーブや土っぽさ、バラ、スパイシーな香りも特徴でしょう。
上記でお伝えしたように、この“イチゴ”や“キャンディ”がブドウジュースのようなニュアンスを感じさせてしまい、マスカット・ベーリーAのワインは低く評価されてきました。
親にラブルスカ種を持つマスカット・ベーリーAだけに、それら種からつくられるワイン特有の、「フォクシー・フレイバー(グレープジュースを思わせる香り)」が感じ取れ、それが輸入ワインに慣れている愛好家や専門家たちから嫌われていたようです。
フォクシー・フレイバーの香りについて厳密には解明されていない部分もあるようですが、アントラニル酸メチル、ο-アミノアセトフェノン等の一連の化合物が関連し、さらにマスカット・ベーリーAにふくまれているフラネオール、4-メトキシ–2,5-ジメチル-3-フラノンが絡み合うことが、フォクシー・フレイバー形成に関連すると考えられています。
しかし、近年生産されているマスカット・ベーリーAワインの多くはこの独特な香りを上手に残しながら、ワインとして好ましい香りの要素を増強させるようにつくられていることから、“世界的に見て珍しい個性あふれる赤ワイン”として評価されるようになりました。
小粒化、垣根栽培、遅摘み、冷涼な環境での栽培など有識者たちの研究・実践の結果、種子や果皮の割合が高まり、さらに香りが増強されたと示唆されています。
例えば、フルーティーさやカラメルのニュアンスを持つフラネオールとココナッツを思わせるγ(ガンマ)-ノナラクトンなどが多く含まれたマスカット・ベーリーAが生み出されるようになり、香り豊かなワインとして進化を遂げました。
種子や果皮の割合が増せばタンニン量が増え、より骨格のある熟成にも耐える品質のワインが生み出せます。
もちろん、あえてマスカット・ベーリーA独特のキャンディ香りを強調したりすっきりと飲めるようなライトボディのロゼに仕上げたり、甘口に仕上げたりといったワインもあり、それはそれで同品種の、“多様性”と捉えることができるでしょう。
甘さを感じる香りが感じられるところがマスカット・ベーリーAの特徴であり、魅力と捉えてワインを楽しむことをおすすめします。
②多様なスタイルが楽しめる
日本固有品種の甲州がそうであるように、マスカット・ベーリーAもまた幅広いスタイルでワインがつくられている品種です。
山梨ヌーボーのような新酒としてリリースされるマスカット・ベーリーAは、イチゴやキャンディのような甘い香りを最大限いかした、爽やかで渋みの少ない早飲みワインとして仕上げられます。
一方、上記のようなライトボディとは違いオーク樽など樽熟成をさせたミディアムボディのマスカット・ベーリーAも人気です。
爽やかな酸味は残しつつ、タンニン量がやや多いため熟成を経たことでまろやかで骨格のある、複雑な味わいへと仕上がります。
樽熟成を経たことで樽由来のバニラやスモーキーさ、ココナッツ様の香りもプラスされており、リッチな印象です。
また一部のマスカット・ベーリーAでは、セニエと呼ばれる果汁を引き抜く贅沢な手法を取り入れたのち、長期の樽・瓶熟成を経てリリースされるこだわりの1本もあるなど、同じ品種であっても多様なスタイルが楽しめます。
美しいその色合いと甘酸っぱさからロゼワインとして醸されることも多く、中には完全無農薬かつ亜硫酸添加なしなど、“ヴァン・ナチュール”タイプのナチュラルなつくりのワインも見受けられるほどです。
マスカット・ベーリーAは、“画一的”な評価が難しく、良い意味でまだ別の表情が隠れているはずだ、と期待してしまう品種でもあります。
ひとつのワイナリーだけでなく、日本全国のさまざまなワイナリーのマスカット・ベーリーAを楽しむ、そんな飲み方がおすすめです。
③和食との相性が良い
マスカット・ベーリーAをはじめ、日本でつくられているワインは和食との相性が良いと考えられています。
中でもマスカット・ベーリーAは日本の固有品種であり、その味わいの特徴から和食の味付けと抜群の相性を示すブドウ品種です。
とくにおすすめなのが、みりんや酒、醤油、砂糖を使った甘だれやソース類を使った料理、また炭火で焼いた料理とのペアリングでしょう。
マスカット・ベーリーAの特徴香であるカラメルやスモーキーなニュアンス、さらに甘酸っぱさを感じるニュアンス、中には煮詰めたジャムを思わせるニュアンスなど、“甘塩っぱいたれ”と“香ばしい炭の焼けた香り”と合わせたくなる要素が満載です。
そのため、たれの焼き鳥、うなぎの蒲焼、鶏の照り焼き、お好み焼きやたこ焼き、ソースたっぷりのメンチカツなどの料理とは難なく合わせられます。
また、ミディアムボディのマスカット・ベーリーAであればかつおやまぐろの刺身や赤酢を使った寿司、金目鯛の煮付けといった魚介類とのペアリングもおすすめ。
ロゼは甘い香りと爽やかな酸味、タンニンも控えめなのでエビチリや麻婆豆腐、酢豚といった中華料理との相性も良いでしょう。
個人的には、トマトを大胆に使った牛肉すき焼きとマスカット・ベーリーAのペアリングがおすすめです。
輸入ワインとはなかなか難しそうなペアリングも、マスカット・ベーリーAであれば成功する可能性があります。
ぜひ、いろいろな組み合わせを試してみてはいかがでしょうか。
「CRAFT WINE SHOP」おすすめのマスカット・ベーリーAワイン3選
多様なスタイルが魅力のマスカット・ベーリーAだからこそ、いろいろなワイナリーで醸されたワインを試して欲しいところです。
ここからは、「CRAFT WINE SHOP」おすすめのマスカット・ベーリーAを3選紹介していきましょう。
Cfaバックヤードワイナリー「Ring Components MBA」
栃木県足利市にある醸造家姉妹が運営する小規模ワイナリー、Cfaバックヤードワイナリー。
「Ring Components MBA」は、地元栃木県産のマスカット・べーリーAを主体に醸されたおすすめのマスカット・ベーリーAワインです。
樽で1年間熟成させたものをブレンドした、ユニークなアプローチで仕上げられた1本。
黒みを帯びた美しいルビー色の外観、さらにチェリーコンポート、プラムのアロマ、穏やかな果実味、熟成かもたらすスパイシーなニュアンスも感じられる複雑なアロマを楽しめます。
時間の経過とともに白桃、ラベンダーといった香りも出てくるため抜栓後にすぐに飲みきらず、ゆっくりとワインの変化を楽しんでみても良いでしょう。
まろやかなアタック、心地よい果実味が余韻として残ります。
モダンなラベルデザイン、さらにヴィノロック(ガラス)栓を採用しているなど食卓に置くだけでスタイリッシュな雰囲気を演出。
ペアリングとしては、タレの焼き鳥、うなぎの蒲焼、すき焼きなど甘めタレで食べる和食と相性が良いでしょう。
Cfaバックヤードワイナリー「Ring Components MBA」
税込2,420円
本坊酒造「シャトーマルス 穂坂マスカット・ベーリーA コールドマセレーション 2022」
山梨県石和温泉駅近くに位置する、マルス山梨ワイナリー 本坊酒造が醸すマスカット・ベーリーAワイン。
「シャトーマルス 穂坂マスカット・ベーリーA コールドマセレーション 2022」の名の通り、除梗破砕したマスカット・ベーリーを発酵前にタンク内にて低温浸漬させるコールド・マセレーション法を採用した赤ワインです。
コールド・マセレーション法は世界的にはピノ・ノワールなどでよく使用される手法ですが、香りや旨味成分の抽出を促進できるためミディアムボディのマスカット・ベーリーAとも相性が良い手法と言えます。
原料となるマスカット・ベーリーAは山梨県穂坂町で丹精込めて栽培されたものを使用。
イチゴ、ラズベリーといった果実の香りが豊かに感じられるほか、アタックは優しくタンニンのまろやかな渋みが旨味となり口中に広がります。
“マスカット・ベーリーAらしさ”を存分に楽しめる王道タイプのワイン。
少しだけ冷やしてから、グラスに注ぎ楽しんでみてください。
本坊酒造「シャトーマルス 穂坂マスカット・ベーリーA コールドマセレーション 2022」
税込1,746円
兎田ワイナリー「Unite ユニテ 2018」
魅力溢れるお酒が生まれる注目の産地、秩父に位置する兎田ワイナリーが醸す特別なマスカット・ベーリーA「Unite ユニテ 2018」。
同じ秩父でつくられる世界的に有名なベンチャーウイスキー“イチローズ・モルト”のバーボン樽で熟成させた、“秩父だからこそ叶った”贅沢極まる赤ワインです。
その味わいの良さはもちろんですが、注目したいのがアートなラベルデザイン。
アーティストである勝屋久さんデザインのもので、その名も同氏がつけたとのこと。
ウイスキー樽でつくられたこのワインを飲んだ時はうまく言語化できなかったものの、飲み続けることで喉いにすっと入りこむといった感覚になったとか。
さらに合わせる料理の幅も広いだろうと想像し、最後の一杯を飲んだときに2つのものがつながる魔法を感じ、「Unite ユニテ」と名付けたそうです。
「Unite ユニテ 2018」は、秩父釜の上地区で栽培されたブドウを使用、マスカット・ベーリーAを主体にメルローもブレンドされています。
ヴィンテージも2018年と熟成されていることから、マスカット・ベーリーAの新たな一面と出会うことができる1本。
大切な人へのギフトとして、ご自身へのご褒美としてぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。
兎田ワイナリー「Unite ユニテ 2018」
税込8,800円
まとめ
マスカット・ベーリーAは、日本の固有品種として2013年にOIVに品種登録された、正真正銘日本代表の黒ブドウです。
栽培方法、醸造方法によって表情を変える変化に富むワインを生み出す品種であり、日本ワインファンの探究心に火をつけること間違いなしの存在になり得るブドウでしょう。
マスカット・ベーリーAの魅力を体感したい方は、ぜひ「CRAFT WINE SHOP」でチェックしてみてください。